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年末のご挨拶 – 2014年を振り返って –

みなさま

2014年も残りわずかとなりました。
本年中も格別のご愛顧を頂き、御礼申し上げます。
まことにありがとうございました。

みなさまにおかれましては、そろそろ仕事も納めのんびりと、はたたまた忙しなく年始の準備、帰省の準備などなさっていられるのではないでしょうか。イヴェントに血が騒ぐタイプの方でしたら、これらも結構ワクワクする行事の一環なのでは?そうでない方は「仕事終わってまた働くのかよ」ってな気分にもなっておられるでしょうが、まぁ楽しんでやれば気分転換、気持ちのリセットにはうってつけと思われますので、無理矢理にでも楽しんで頑張ってくださいませ。全ては気の持ちよう、何でも楽しくなってくるものです。

また音楽産業に身を置かれる方々には年末年始の公演、番組などでの演奏やら何やらが控えている方も少なくないでしょう。僕自身のそういった経験は25年ほど遡ることになり、たいへん古い記憶で恐縮ですが、やっぱりお祭り気分ありますよね~。思いっきり楽しんで下さい!

さて、いま僕は制作作業を中断し、マネージャーに促されこの挨拶文を書いています。
仕事納めのメドも立っておりませんが、とにかく年内作業は年始早々行われる録音の準備ですから、年内に目鼻をつけとかなければ大晦日も三ヶ日も壊滅!–家族持ちにとってこれは一大事です(笑。
同じような境遇の方もいらっしゃると思いますが、お互い頑張りましょう。

さて、僕自身の2014年を総括してみます。
そうだな~~”寝なかった年”ですかね。

おかげさまでというかなんというか、例年でもほとんど寝ることのできない時期は存在します(音楽作るのは大好きだが、眠るのも同じくらい好きなのに)。でもそういった1週間、1ヶ月を過ぎれば、ダラダラと英気を養う時間を貪るのが通常です。「ダラダラ」「貪る」という2つの語の相性に感じる違和感はご容赦頂くとして、とにかくダラダラするんです。
しかし、今年は年始の制作、ライヴ準備、「ナイトフライ」執筆の追い込みが並走していた頃からいままで、ず~っとそのペースでした。いや、継続中ですからまだそのペースです。4時間以上ベッドで寝た日は2014年通しても20日に満たないんじゃないだろうか。限界を少し超えるくらいまでやって1~3時間仮眠する。スタジオのソファ、スタジオの床、リヴィングのソファ(こちらは家族にとって迷惑だったろう)なんてことも多く、さすがに起きてしばらく動けないみたいなときもありました(笑。もっともヤバイと思ったのは、並行した二作品の制作中(もちろん作業は家のスタジオで一人きり)、片方がほぼ終わりかけ(ってことはミックス)、すぐ着手しなければならない次の作品のことが気になっていたのだろう、そして体力と集中力も限界だったのだろうが、一人きりの僕は、傍らに次作品スタッフの◯◯さんを感じており(幻覚と言えるほどハッキリとはしていない・幻覚見たことないけど・笑)、彼と談笑しながらマスターを録り、-1、インストを録っていた(笑。”(笑”とか書いてるけど、ちょっと怖いですね。まぁ、半分寝ていた=夢だったんだろうけど、ハっと気づき、これはヤバい、とすぐに思ったので頭は大丈夫だと思います(マスター、-1、インストもちゃんと録れてましたし・笑)–これは4ヶ月くらい前の話です。寝ていないといってもイリーガルなものはもちろん、強精剤や眠気覚まし薬の類いも何一つ接種しませんから、わりとタフなんだと思います。で、こういった生活のせいでアイディアが枯渇するとか、基準がブレることもなかったので良いのだが、こんなことを何年も続けていいのは42歳まで(イメージ)。特に体調も崩していないのを幸いと、52歳がこんなペースを続けては身体に悪いに決まってます。仕事量の問題ではなく、やり方の問題ですからね。後半はこのペースにも慣れ、仮眠1時間だったところが3時間平均になりました。まぁとにかく、来年はベッドで5時間寝る日を200日くらいにはしようと思います。

いろいろな方と音楽制作したことはもちろん全てトピックなのですが、2014年はそれ以外のトピックもたくさんありました。

冨田ラボ・LIVE-Instruments & Voices @Liquidroom

まったく今年だという気がしませんな(笑。2/24にライヴをやりました。
3回目(イヴェントも入れると4回目)のライヴなのに少し趣向を変えまして、ゲスト・ヴォーカルを代わる代わる招くのではなく、ヴォイセズとしてbirdさん、さかいゆうさん、児玉奈緒さんにはほとんど出ずっぱりになって頂き、既発曲はアレンジを変え、また新曲も取り入れ、さらにインスト曲も多めにやりました。とても楽しかったですが”趣向を変える”なんてことを思いつきましたので、準備がやたら大変だった記憶があります。でも新曲作ったのは楽しかったな、特にDEMO1。その時の新曲2曲はYoutubeにまだ上がってると思います(抜粋編集版です)。冨田ラボ DEMO と検索してください。あと今になって思えば、このライヴのリハ中にマーク・ジュリアナの名前を出してもほとんどみんな知らなかったな。グレッチェン・パーラトの旦那という説明で数人が頷いてくれた程度だった。今はMGのことみんな(っつっても界隈でですが)知ってるだろうから、それほど今年前半と後半では違っているという指標にもなる。と言っても、MGがどれほどの指標だって話ですが(笑、音楽家たちの中での知名度がね、グンと上がるっていうのはその後の音楽家たちへの影響もあるわけで。そりゃ楽しいじゃないですか。

『ナイトフライ 録音芸術の作法と鑑賞法』

本を書きましたが、なにせ書籍の執筆など生まれて初めてなので大変でした。内容に関しては普段からの蓄積とも言えますが、それ以上に本作りの工程がわからなくて戸惑ってしまいました。そんな苦労の甲斐もあり、大変なご好評を頂きうれしい限りです。トークショーも5本ほど開催され、違った分野の先生方、音楽家とお話するのは大変有意義でした。もちろん、それぞれご専門は違ってもディープなミュージック・ラヴァーと括って良い方々でしたから、適切な問題提起と進行、僕の与太話さえ広げて下さった手腕のお陰で成立したショーでしたね。(僕もしゃべる側ですけど)もっともっと話を聞いていたかったショーも多かったので、また機会があればやりたいと思います。
そして「ナイトフライ」に関しては関連ツイートをRTしまくるという宣伝行為をしてみましたが、何だか新鮮でしたね、そんなことでも。ある時期にはTL上のお目汚しになったと思いますのでお詫び致しますが、音楽作品でいうラジオにあたるメディアは書籍の場合なんだろうか、と考えて試行しました。音楽は聴いて頂ければわかりますが、書籍はネット上にある数ページ以外、試し読みをして頂く方法はない。本屋さんで手に取って頂きたいのですが、拙著はどの本屋さんにでもおいてあるような本ではありませんからね。だったらツイートされる好意的な意見、書評を拡散し、是非興味を持って頂こうと考えたわけです。文字には文字だろ~みたいなところか。
あっ、次作(書籍のね)の大枠は大体決まってますが、打ち合わせの時間がなかなかとれません。。

『スクール・ライヴ・ショー』

TV(NHK・Eテレ)で高校生バンドの審査をし、合間に演奏をしたのも新鮮でした。
高校生のバンドを観て印象的だったのは、完全に”J-POPベースの音楽”としか形容しようのない音楽が多かったこと。あたりまえか。いや、想像はしていたけど、それ以上だったんです。
J-POPと総称したとき、一般的にいう音楽ジャンルとしては幅広過ぎますから、そこには固定されたマナーはないと思っています。でも、多くは一聴して”ルーツからJ-POPだな”としか聴こえなかったんですよね(ここではJ-POP≠歌謡曲←歌謡曲といったときにはルーツ足り得るものもある印象←てか、僕がどちらもよく知らないということが前提です)。1ジャンルとしては括れないJ-POPをルーツとしていると感じた、そうとしか聴こえない音楽がある、そしてそれらをまとめて聴いた–全て初めてでしたね。
ただ、驚いたわけではありません。十数年前から顕著でしたが、若いアーティストと仕事をするときに「どういう音楽が好きか?」という会話では、大体J-POPアーティストの名前が挙げられていましたから。でも新鮮だったのは、純化されたJ-POPと感じたというか、不純物、悪玉菌とでもいえるものが淘汰された後の状態を聴いている感覚があったことですね。あ~、そうするとマナーも決まってルーツ・ミュージックになりえるのか。まぁ、どんなものでも継続されていれば洗練の時期が訪れるわけですが、高校生の音楽を聴いて「いまはその時期なのかな」と感じました。その後どういう時期が訪れるのかは割愛します。
「いつもどこでも」をボニー・ピンクさん、小宮山雄飛さん、白根賢一さん、鈴木正人さんと演奏したのは楽しかったな。これであの曲にはさかいゆうさん、児玉奈緒さん、ボニー・ピンクさんという3ヴァージョンが存在することになったんだ。あっ、2月のライヴでさかい&児玉合体転調ヴァージョンも作ったから4ヴァージョン!CMヴァージョンも入れると5ヴァージョンだ!なんだか凄い。またボニーさんの「Heaven’s Kitchen」でギターを弾いたのはすこぶる新鮮で凄く楽しかった。プロデュースにも編曲にも関わっていない曲を演奏したのは多分25年ぶりくらい。

『ソニアカ』

これも初体験で、講師をやってくれということでした。
といっても、内容は真面目ですがイヴェントです。他にはとても有名な方々が講師として大勢集い、音楽にまつわるいろんな講義を3日間でやるというもの。僕は「on you surround」をインスパイア元曲からアレンジの変遷(この曲は一度完全フェラ・クティ・アプローチでも作った・それも披露)、途中でニュー・ウェイヴ方面に移行してRip Rig & Panic、Pop Group、エイドリアン・ブリューなんぞの要素を入れる経緯や、メトリック・モジュレイションのことあたりまで説明、時間もなくなり、あとはレコーディング秘話的なものをアソシエイツの灰野さんとお話しました。初日のヒトコマ目だったので温度感もわからず、生徒さん達の真剣な眼差しを見てやり方を決めましたが、少し真面目過ぎたかな。後半の秘話ではくだけた話で笑いも起こっていたから、真剣に思えた眼差しは緊張によるものだったのかも知れません。

『即興作編曲ショー』

終演後、想像以上に疲弊していました。
ライヴには演奏者側にも発散という側面があります–半分くらいかな~。人前で演奏する、より良いステージにしよう、という集中と緊張が高揚と発散と相まって、終演後に心地よい疲労感、爽快感として残ります。
ところがこのショーに発散する場面は皆無だった(笑。
当日のサウンド・チェック(そこでさらに1曲作っているんですが)以外リハも何もなく、その場で歌モノを作曲、編曲するのだから、そんなに疲れないだろうと思っていたのですが、時間をシビアに気にすること、楽器を急いで取っ替え引っ替えすること、歌うこと(仮歌・コーラス)が疲れの主因と考えられます。基本コンセプトにまで遡れば、ショーとしてなるべくみなさんに楽しんで頂けるよう(いろいろ演奏し、歌うこと、滞りなくある程度のスピード感をもって全てを運ぶことに主眼をおきました)、しかも次作に集録する曲を作る(とにかく内容の吟味=ショー的にはあまりパっとしない)という両立の難しい取り決めをしてしまったところが、欲張りすぎだったのかも知れません。
ご来場頂いたみなさんにはその過程(1ステージ1曲、一部編曲済みの1コーラスを制作)をご覧頂き、後日ダウンロードで音源をお渡ししています。僕は良くなりそうな曲が思いつくと、スタジオに妻を呼び、かなり途中段階の音を聴かせながら「これにハープ入ってさ、イントロはゴーっつってポルタメントかかったシンセから転調してさ..」みたいに説明するのですが、「あなたは頭の中に音が鳴っているからわかるだろうけど、よくわかんない」と言われます(笑。今はそんな状態でしょうか。でも良い曲ができましたので、収録曲すべての作曲をライヴでやっていくとどうなるんだろうってな興味も湧いています。まぁ、そんなリスキーなことはやらないでしょうけどね。何にしろ、これで冨田ラボ5thアルバムのレコーディングも開始されたわけです。

いま思い出せるイレギュラーなトピックはこんなところかな。
それ以外は音楽(録音物)を作っていました。
音楽制作物に関してはオフィシャルHP、FBにてお知らせされていると思いますので、チェック頂ければ幸いです。
あっ、ハイレゾのムック本の取材も受けましたね。もう発売されているかな。ハイレゾ、高橋健太郎さんはお弁当箱を例にとてもわかりやすく説明をされていましたが、僕は確か額縁を例に出して話をしたと思います。

音楽作品に関しては是非チェックして聴いて頂きたいのですが、あっ、そうだ。今年のトピックとしてパっと思い出せる2人のシンガーがいます。もちろん今年も多くの素晴らしいシンガーと仕事をしていますが、ヴォーカルRECをしない場合もあります。僕が今年直接レコーディングしたシンガーの中では2人が強く印象に残っている。

土岐麻子さんとやなぎなぎさんです。

彼女たちにはキャリアや音楽性の違いがありますが、現代の音楽家、シンガーとして同質のクオリティ、ポテンシャルを感じました。
拙著「ナイトフライ」では音楽家の精度、進化についても触れています。一応お断りしておきますが、シンガー、演奏者に関わらず、その精度によって音楽家の真価が問われるものではありません。決してそうではありません–当然のことですが、ときどき勘違いされる方もいらっしゃるので一応書いときます。またその精度とはクラシック的な(伝統的な)観点によるものだけでもありません。具体的には長くなりますので別の機会に譲りますが、とにかく、彼女たちは(新世代と形容してもよい)高い精度を既にデフォルトとしていました。そしてその先での表現に意識を向けていたのです。マーク・ジュリアナはじめ、昨今のドラミング(リズム面)についての刷新については以前から各所で触れていましたが、シンガーについても同じようなことを、しかも実際の仕事で感じましたので、2人のことは強く印象に残りました。
てか、そんなこと関係なく、2人ともとてもよいアーティストです!

ご挨拶のつもりがとんだ長文になってしまいましたが、2014年を振り返ってみました。
まだまだお知らせできないトピックがテンコ盛りです。詳細はHP、FB、Twitterにて順次お知らせ致します。

では、みなさま、よいお年をお迎えください。

冨田ラボ(冨田恵一)

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2014/12/29 09:40